開催レポート

 

 

「イメージング技術の未来展望」

開催日時:2018127日(金)

開催場所:学術総合センター 一橋講堂

 

<プログラム>

09:30-09:45

学会長挨拶

 

東海大学

面谷 信

09:45-10:30

画像技術の進化と学会の果たした役割、そして未来

元キヤノン()  

高橋 通

10:30-11:15

ワークスタイルの変遷と働く場の未来像

 

コクヨ()

齋藤 敦子

11:15-12:00

イメージング技術のビジネス展望

 

コニカミノルタ()

腰塚 國博

12:00-13:00 昼食】

13:00-13:20

複写機遺産認定式

 

2018年度

複写機遺産委員会

13:20-14:00

複写機遺産認定記念講演

 

 

14:00-14:45

画像技術の役割とその変遷

−記録と創造の狭間で      

千葉大学

久下 謙一

14:45-15:00 休憩】

15:00-15:45

インクジェット技術の未来

 

セイコーエプソン()

碓井 稔

15:45-16:30

複製技術の果たしてきた役割と未来

−印刷・出版を中心に

専修大学

植村 八潮

 

 


<講演内容>

 

学会長挨拶   東海大学 面谷 信 氏

面谷会長

電子写真懇話会から電子写真学会を経て、今日の日本画像学会へと至った流れの紹介に続き、学会のビジョンとして、2013年提唱のVision55を踏まえて2018年に策定されたAction Before 2020について説明された。その中で、学会の指針として核となるEPIJ技術をオフィスだけでなくプロダクションプリンティングへとその適用領域を広げていくこと、デジタルファブリケーション分野にも展開を進めていくことなどが挙げられた。また、3Dプリンティングや視覚分野の強化等についても合わせて述べられた。

 

画像技術の進化と学会の果たした役割、そして未来  元キヤノン() 高橋 通 氏

高橋氏

1958年の学会発足から今日までを @草創期 A国産化 B成長期 C多角化 Dカラー化 の5つの期間に分類し、それぞれの時代における各社機種群を写真や原理を交えながらご紹介いただいた。その中で、成長期におけるキヤノン社の乾式一成分ジャンピング現像の発明と、その後のカートリッジ形態に至るまでの開発の流れを詳細にご説明いただいた。

また未来への提言として、日本画像学会の設立によって協調が進んだが競争心や独自性が薄れているのではないかといった懸念や、画像分野の次のツールとして必須となるAI技術について、ベースとなるデータ入手における著作権の壁の課題、それを脱却するためのビジネスモデルを含めた独創的な研究への期待等が述べられた。最後には現在の状況を過去Xerox社の先行と独占に挑戦した経緯と重ね、当時と同様に危機感の共有と新たな挑戦によりこの状況を打破するよう、期待の言葉をもって締めくくりとされた。

 

ワークスタイルの変遷と働く場の未来像  コクヨ() 齋藤 敦子 氏

齋藤氏

1950年代から現在までのオフィスの変遷を、当時の写真や多くの具体的事例を交えながらご紹介いただいた。バブル崩壊前のオープンオフィスや人を中心としたレイアウトから、バブル崩壊により合理的/効率的なレイアウトが主流となり、さらに一人一台のPCを持つ時代には再びチームでのコミュニケーションのあり方に着目したオープンなレイアウトが復活する等、時代と共にオフィスの形態は流れを持って変化している。そして現代の働く場は情報を処理するオフィスから、知識を創造するワークプレイスへと変化してきていることが、北欧での具体例を元に説明された。
終盤には、AIやロボットによる生産性革命や働き方の多様化等を受けた、働く場の未来像について触れられ、コクヨ社から提案されているコミュニケーションの活性化を促す心地良いスペースについて紹介された。また、その兆候としてワークスペースからイベントスペースへ、オープンラボからリビングラボへの変遷例についても取り上げられ、未来のオフィスはもはや事務所とは呼べない姿となるであろうことが示唆された。

 

イメージング技術のビジネス展望  コニカミノルタ() 腰塚 國博 氏

腰塚氏コニカミノルタ社の取り組みを元に、画像技術の今後の可能性と他分野への適用についてご紹介いただいた。コニカミノルタ社では、写真/カメラといったアナログ画像再現からMFP/TACのようなデジタル静止画処理、さらには画像IoTといった動画像認識へとその技術領域を進化させてきており、その中で培われたコア技術をベースとしてデジタルイノベーションの創出を図っている。また、「Open Close Architecture」というポリシーを元にオープンイノベーションを実践しており、必要な技術は自他社の垣根を越えて獲得し、コア技術との融合を図っている。

後半にはコニカミノルタ社が実際に展開している画像IoT技術として、体内の見える化=「診断」、製品内部や品質の見える化=「検査」等、新分野への適用事例が数多く紹介された。また、講義全体を通じて、現在は技術競争ではなく価値発現の競争になっていることが強調され、社会課題/顧客視点で新しい価値を創出することの重要性が示された。

 

複写機遺産認定式、記念講演

複写機遺産受賞者本年度複写機遺産に認定された以下4機種についての認定証が授与された。また受賞各社より、当時の写真やカタログを交えながら開発時のトピック、複写原理や装置構成等がそれぞれ紹介された。

 

     第1号 リコー リコピー101

     第2号 富士ゼロックス 914

     第3号 キヤノン NP-1100

     第4号 コニカ U-Bix480

 

画像技術の役割とその変遷−記録と創造の狭間で   千葉大学 久下 謙一 氏

久下氏物事の伝承手段という観点から、画像の意味と今後の在り方についてご講演いただいた。動物は記憶のみでしか物事を伝えられないのに対し、人間は文字を使って同時多数かつ遠距離の伝達を可能にしたこと、物語の発達は真実と真実でないもの、すなわち記録と創造を生み出したこと、そのうち真実を正しく伝えるための手段として写真や画像が生み出されたこと、等が時代の流れと共に説明された。ただし現在のデジタル化された時代においては、画像も処理の段階で創作することが可能なため、記録と創造の区別がつかなくなってきている。その中で記録は生活に必要な良い画像、創造は心を楽しませるための美しい画像といったように、それぞれに合った形で画像形成を行う意識が必要との提言がなされた。

最後に真実の独占や創作に対する今後の懸念についても触れられ、画像技術はそれに加担すべきではないとのお考えも合わせて述べられた。

 

インクジェット技術の未来  セイコーエプソン() 碓井 稔 氏

碓井氏セイコーエプソン社のIJヘッド技術であるピエゾ方式の原理説明から、最新技術である「 PrecisionCoreテクノロジー」について、インク技術の進化と合わせてご説明いただいた。セイコーエプソン社は世の中に「なくてはならない会社」でありたいという理念を掲げており、自社技術により現代の多種多様なニーズに応えたい、という思いが「ヘッドとインクであらゆる技術を置き換える」という表現で紹介された。

後半ではIJ の未来に向けた役割として @環境負荷低減 A産業構造革新の二点を挙げられ、それぞれの目標に対する具体的な取り組みについてご紹介いただいた。前者の中では、レーザープリンタのIJ化による廃棄物/消費電力低減や、大容量インクの採用による印刷コストの低減等、「省、小、精の価値」を基盤としたビジネス構想が述べられた。また、後者の中ではフォトビジネスのIJ化の例や、バイオ、医薬品、センサといった各分野へのヘッド技術の展開例等、IJ技術の今後の可能性について広くご紹介いただいた。

 

複製技術の果たしてきた役割と未来−印刷・出版を中心に   専修大学 植村 八潮 氏

植村氏我々はどうやって考えを伝えているか?の視点から、出版の現状と今後についてご講演いただいた。最初に声や身振りでの伝達は瞬間的であるが、絵や文字によって時間と空間の制約が外れたこと、それによって表現の工夫や解釈の違いが生まれたこと等が説明された。続いてコミュニケーションに変化を起こした印刷、出版、産業、電気通信、情報、デジタルの各革命とその必要期間について紹介され、技術の進化のスピードが近年では劇的に早くなっていることが示された。

続いて、紙媒体から電子書籍への変化と、それぞれのメディアとコンテンツの適合性について説明され、例えば漫画/小説投稿サイトのように、今は電子書籍が紙よりも先に発行される時代になりつつあることも述べられた。

全体を通じて、現在入手できる情報だけでは未来を予測するのが難しくなっていることが伺えた。また、例えばスマホ上でSNSを読むのは読書と思うか?等の問いかけを通じて、聴講者各自がメディアの違いや時代の変化をわかりやすく理解できる内容となっていた。

以上

記・中井 洋志(リコー)