第80回 イメージングカフェ レポート


    【ご参考】第80回募集案内


2019年10月25日(金)18:30〜20:20、東京工業大学キャンパスイノベーションセンター(田町)にて第80回イメージングカフェを開催しました。今回は地球科学可視化技術研究所(産総研発ベンチャー)所長であり、福井県立大学恐竜学研究所の客員教授でもある芝原暁彦をお招きし、「最新の地球科学と3D製造技術が織りなす未来の博物館」と題し講演いただきました。講演の参加者は22名(講師、企画委員含む)。懇親会ではアリスアクアガーデン田町に場所を移し、さらに活発に議論し、親睦を深めることができました。

現在化石として我々の目に触れる古生物は、過去に大成功した生物と言え、世界中の広範囲で発見される事から、例えば海洋生物の分布を統計的に処理する事で、何億年も前の環境の推定に用いる事が可能なのだそうです。例えば、海底の泥から得られる有孔虫の種類は水中の酸素濃度で異なるため、この分布を地図情報に付加する事で海洋環境の分布が推定でき新たな価値が生まれるそうです。一方でアラスカのような極地周辺で大きく変化が表れる地球温暖化の影響等は数万〜数十万年単位の現象で、地学研究で用いられる時間単位の大きさが一般の方に分りにくい一因となっているとの事です。

つくばの産業総合研究所に併設される地質標本館に展示されている全長9mの日本地図模型は、白色の立体地図上に1.8m上方から広角投影が可能なキヤノン製プロジェクター5台で地形や地質、社会インフラ、人口動態など様々な情報画像を投影できるようになっています。投影映像の端部で画像が重なる付近は、陰影が自然に見えるように画像を補正するなど様々な工夫をされているそうです。展示を始めた当時、光軸調整可能な機種はこれしか無く、できれば専用機器が欲しいとのことでした。また、来客による振動等でピント位置ズレが頻繁に発生するため保守が大変で、展示の大変さを語られていました。

地質学研究を如何に社会に還元するかを考えておられ、表示の判読のし易さ(地質図では岩石の種類で6つに分け200種に描き分けているため解像度も必要との事です)や、億年なのか万年なのか等のスケール感の表現に腐心されているそうです。この地図に年毎の学校の位置を表示する事で人口の動態変化を表現でき、文化人類学的な方言の変遷を表示する事で多文化の融合を可視化できるため、地図をハブとして専門家とそれ以外の方とのオープンイノベーションに繋げられればと話されておりました。

元々のアイデアは、医工学で副鼻腔の手術のシミュレーションに3Dプリンタで製作した人体模型を応用しているのを見て、これを東京の地下情報に変えれば防災教育や建築用に使えると思いついた事によるそうです。最初の立体地図の作製は、地図ソフトであるカシミールが3Dフォーマットを出力できた事から、ローランドの3Dプロッターで削り出しで造型する所から始めたそうです。最近は3Dプリンターも検討しているとのことですが、解像度が足りない事と、厚みにより各場所の収縮率が違うためプロジェクションとの位置合わせが難しく、大きなものには使えないとの事でした。
ブラタモリで使われている立体地図株式会社ニシムラ精密地形模型と共同で開発)は持ち歩くためプロジェクションは使えず、写真の技術で着色しているとの事です。

CGやVRが主流となる中で、博物館の展示はご自身の趣味である特撮などの映像制作技術と同様に、デジタルとアナログを繋ぐフロンティアと考えているそうです。デジタルアーカイブ化された展示物を触れる事ができる模型化する事は、実態であるアナログ標本とバーチャルであるデジタル標本の良いとこ取りと言え(VRに対してRV(Realized Virtual)と呼び)、ある意味、デジタル情報の開放と考えているそうです。人はどうしても実態物を求める生き物であるとも話しておられました。

記・企画委員 森川 尚(富士ゼロックス)


次回(第81回)は2月7日(金)に開催予定です。詳しくは開催案内をご覧ください。